分裂勘違い君劇場ANNEX

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人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている - 第三章



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この記事は、 『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」できまっている』という本 の最初の5章をWeb化したものです。この本は図とイラストがキモの本ですが、iPad及びiPhoneのKindleではバグのため画像がちゃんと表示されません。iPhone/iPadユーザの方は、WindowsかMacのKindle for PCで閲覧するか、紙版を買うか、iBookで購入することをお勧めします。挿絵イラストは(c) ヤギワタルさん 、キャラアイコンは しらたさん の作です。書籍版と若干異なる部分があります(書籍版はモノクロ)。書籍版の 正誤表はこちら

自分はハロー効果に騙されないと思ってる人が騙される理由



「はじめに」で紹介した「全体的に優秀」という思考の錯覚は、
「ハロー効果」と呼ばれる認知バイアスによって引き起こされている。

え? 
なに?
話が複雑すぎて、頭に入らないんだけど?

まず、認知バイアスって、なんだかわかる?

バイアスってなに?

「偏向、偏見、先入観、偏り、ゆがみ」という意味だ。

じゃあ、「認知の偏り、ゆがみ」という意味か。
認知が偏るとかゆがむって、どういうこと?

じゃあ、ミュラーリヤー錯視を例に考えてみよう。

これ、上の線と、下の線は、「本当は」同じ長さだよね。
でも、下の線のほうが、長く「見える」。

そうね。

ゆがんだレンズをかけていると、世界がゆがんで見えるだろう?

それと同じように、脳の認識機構がゆがんでいると、実際の線の長さと、認識される線の長さがズレてしまう。
この「ゆがんだレンズ」に相当するものが認知バイアスなんだ。

「はじめに」で出てきた「全体的に優秀」という思考の錯覚の話も同じだ。
脳の認識機構というレンズがゆがんでいるために、「実際の政策のよさ」と「認識される政策のよさ」がズレてしまう。

でも、正しく政策を認識できる人もいるよね?

そう。「認知バイアス」というのは、あくまで、科学的手法で検証された「認知の偏り傾向」のことなんだ。
「大多数の人間は、そういう『傾向』を持っている」ということであって、当然、例外もいる。

認知バイアスには、いろいろな種類のものがある。
それぞれゆがみ方の異なる、さまざまなゆがんたレンズがあるということ。
そのうちの1つが、ハロー効果なんだ。

「思考の錯覚」というのは?

認知心理学の「認知バイアス」という専門用語は、一般の人には、直感的にわかりにくい。
だから、本書では、認知バイアスという言葉を使う代わりに、できるだけ「思考の錯覚」という言葉を使うようにしている。
「思考の錯覚」なら、「目の錯覚のようなもの」というたとえで理解できるから、理解しやすいんだ。
人間は、「~のようなもの」と言われると、物事を簡単に理解できる生き物なので。

「認知バイアス」と「思考の錯覚」の関係は、「ゆがんだレンズ」と「見間違い」の関係だ。
これは、「認知バイアスというゆがんだレンズ」をかけているので、「思考の錯覚という見間違い」をする、という意味だ。

「思考の錯覚」と「錯覚資産」の関係は?

たとえばあなたがイケメンor美人だとすると、あなたに会った人は、あなたの実力を、実際以上に高く評価する。
これは思考の錯覚なのだけれど、この思考の錯覚には、次の2つの特徴がある。

・他人があなたに対して抱く思考の錯覚。
・その思考の錯覚は、あなたにとって都合がいい。

この2つの特徴を持った思考の錯覚は、あなたの資産として機能する。
なので、こういう思考の錯覚を、本書では「錯覚資産」と呼んでいる。

まとめると、用語の定義は次のとおり。

・錯覚資産とは、「他人が自分に対して持つ、自分にとって都合のいい思考の錯覚」のことである。
・思考の錯覚は、認知バイアスによって引き起こされる。
・認知バイアスとは、認知心理学の概念で、「認知の偏り」という意味である。
・ハロー効果は、認知バイアスの一種である。



で、結局、ハロー効果って?

説明する。
「ハロー効果」の「ハロー(halo)」とは、あいさつではなく、後光のこと。
なにか一点が優れていると、後光がさして、なにもかもが優れて見えちゃうような錯覚、というわけだ。

興味深いのは、「ハロー効果ね。ああ、知ってる」と言う人のほとんどは、あいかわらずハロー効果に引きずられて、誤った認識や判断をしているということだ。
「わかる」ということは、行動が「かわる」ということ。
行動が変わっていないのであれば、それは、わかっていないということだ。

ハロー効果への対処法ぐらい、大学の一般教養で習うだろう?

もちろん、ハロー効果への対処法を知っている人は、たくさんいる。
けれど、ほとんどの人は、それをやっていない。それは、次の5つの理由による。



1.理屈としては、ハロー効果への対処法を理解していても、「直感的に正しいと感じること」が正しいとしか、思えないから。「直感が間違える」というエビデンスがいくらあっても、客観的事実より、自分の直感のほうを信じる。人間とは、そういう生き物なのだ。



2.たとえ直感が間違っているとわかっていても、直感的に正しいと思える行動をしたほうが気持ちいいから。
そして、直感的に正しいと思う行動をしないと、不安で、不快で、気分が悪くなるからだ。
人間は、正しさなんかよりも、自分の欲望に忠実に生きたほうが、断然気持ちがいいし、人間は、正しいほうではなく、気持ちがいいほうを選ぶ生き物なのだ。



3.SNSでもリアルでも、「直感的に間違っていると思える正しいこと」を言うと、友人知人に間違っていると決めつけられ、反感を買い、嫌われるから。「直感的に正しいと思える間違ったこと」を言ったほうが、人々に共感され、支持され、交友関係がうまくいくから。



4.ほとんどの場合、直感に基づいて意思決定したほうが、組織内での自己保身に都合がいいから。

ほとんどの組織は、ピラミッドの頂点から底面まで、「ハロー効果でずぶずぶに汚染された直感」で、意思決定されている。
もし、あなただけ、「ハロー効果に汚染されていない直感」で意見を述べたら、たとえあなたがどんなに正しいことを言っていたとしても、ピラミッドの上から下まで、全部と対立することになる。
部下も、同僚も、上司も、上司の上司も、上司の上司の上司も、経営層も、全員が、あなたと意見が対立することになる。

そんなことをしたら、あなたは、上司の不興をかって、出世できなくなるどころか、下手したら年収が下がったり、組織にいられなくなったりしかねない。
一方で、あなたがハロー効果に汚染された直感で誤った判断をしたとしても、組織の上から下まで、みんな同じ過ちをやっているので、あなただけ特別不利になることはない。
もちろん、ライバル企業も、ハロー効果に汚染された直感に基づき、誤った判断をしているので、競争上の不利もない。



5.ハロー効果による錯覚は、権力者にとって、都合がいいから。

「地位が高い」とか「実績がある」と、

その人が「全体的に優れている」と、人々は認識する。

それによって、その人の考え方や発言内容の「正しさ」まで底上げされ、実際よりも正しいように聞こえるのだ。

これは、経営者や管理職はもちろん、人気作家、起業家、芸能人、有名コンサルタント、人気ブロガー、人気ユーチューバーなど、いろんな人に当てはまる。

ハロー効果の汚染を除去すると、それら社会的強者・成功者たちの、考え方・価値観・発言の正しさが、暴落する。

これは、彼らにとって、大変都合の悪い事態だ。
それまで、部長の言うことを、「部長が言うんだから、正しいんだろう」と人々は無意識のうちに受け入れていたのに、ハロー効果を除去すると、「はたして、それは本当なんだろうか?」「ちゃんとデータを取って調べないと、わからないんじゃないだろうか?」などと人々が疑い始め、上司は、部下たちに、簡単に言うことを聞かせられなくなってしまう。

人気コメンテーターだって、コンサルタントだって、困ったことになる。今までは、視聴者も顧客も、ハロー効果によって、自分の意見を重宝して聞いてくれていたのに、ハロー効果汚染が除去されると、視聴者も顧客も、自分のコメントやアドバイスを以前ほど正しいとは思ってくれなくなり、払われる報酬も、下がってしまいかねない。
大損どころか、自分の社会的地位が脅かされてしまう。

つまり、ハロー効果を除去するということは、それら社会的強者を敵に回すことになるのだ。

もちろん、そんなことをしたら、あなたの社会生活は、成り立たなくなる。
だから、仕事では、ハロー効果まみれの意見を言われても、曖昧な笑顔を浮かべながら黙認せざるを得ないことがあるのはしょうがない。

しかし、あなた自身の人生の選択だけは、話が別だ。
あなたは、あなたの人生の最高経営責任者だ。
あなたは、あなたの人生の経営判断を、是が非でも間違えるわけにはいかない。
だから、自分の人生の選択をするときだけは、徹底的に思考の錯覚の汚染を除去して、研ぎ澄まされた直感と論理的思考で、本当に正しい判断をしなければならないのだ。



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